労働安全衛生体制はなぜ役割を保証しないのか

— 制度と構造のあいだにあるもの —

Why Legal Safety Structures Do Not Guarantee Functional Roles

— The Gap Between Systems and Structure —

はじめに

労働安全衛生の体制は、法令に基づいて整備されます。

・衛生管理者

・産業医

・安全衛生委員会

これらは、一定規模以上の事業場では設置が義務付けられています。

このため、

体制が整っていれば、役割も明確である

と考えられることがあります。

しかし実際には、

一定の職務は定義されていても、

それがどの判断にどのように接続するのかまでは定義されません。

体制とは何か

体制とは、

「誰を置くか」が定義されたもの

です。

たとえば、

・産業医を選任する

・衛生管理者を配置する

・委員会を開催する

といったことです。

ここでは、

存在は定義されますが、

何をどのように担うかまでは定義されません。

役割とは何か

役割とは、

意思決定の中で何を担うかが定義されたもの

です。

具体的には、

・何を扱うのか(事実/評価)

・どこまで関与するのか

・どの判断に接続するのか

といった位置づけです。

つまり、

体制が「配置」であるのに対し、

役割は「機能」です。

なぜ体制だけでは役割が生まれないのか

体制は、

存在を決めますが、

判断の流れを定義しません。

そのため、

・誰が事実を扱うのか

・誰が評価するのか

・誰が最終判断につなぐのか

が不明確なままになります。

この状態では、

・判断が重複する

・判断が抜け落ちる

・特定の人に依存する

といったことが起こります。

構造として見るということ

ここで必要になるのが、

構造として体制を見る視点です。

構造とは、

判断がどのように流れるかという設計

です。

体制に対して、

・どの位置に置くのか

・どの判断に関与するのか

・どこまでが役割なのか

を接続していく必要があります。

こうしてはじめて、

体制は役割として機能します。

おわりに

労働安全衛生体制は、

組織にとって重要な前提です。

しかしそれは、

役割が機能するための「条件」であって、

それ自体が役割を保証するものではありません。

役割は、

体制の中に配置されるのではなく、

意思決定の構造の中に配置されるものです。

制度を整えることと、

機能する構造をつくることは、

同じではありません。

Keywords

• Occupational Health System

• Safety Structure

• Role Design

• Decision-Making Structure

• Organizational Accountability