復職制度はなぜ疾病モデルから抜けられないのか

Why Return-to-Work Systems Remain Trapped in the Disease Model

企業の復職制度を見ると、

多くの場合、次のような構造になっています。

• 休職

• 治療

• 主治医の許可

• 復職判定

• 復職

一見すると合理的な流れのように見えます。

しかし、この構造には大きな前提があります。

それは、

「復職問題=疾病の問題」

という前提です。

つまり、復職制度の中心にあるのは

疾病モデルなのです。

疾病モデルの構造

疾病モデルでは、問題は次のように整理されます。

1. 従業員が病気になる

2. 医療機関で治療を受ける

3. 病気が回復する

4. 働ける状態になる

5. 復職する

このモデルでは、

問題の中心は「病気」になります。

そのため復職の判断も、

• 病気は治ったか

• 主治医は許可しているか

という医療的判断が中心になります。

しかし職場で起きている問題は違う

実際の復職の困難さは、

必ずしも疾病の問題ではありません。

多くの場合、

• 業務量

• 人間関係

• 職場配置

• 組織構造

といった、

職場の構造

が関係しています。

しかし疾病モデルでは、

これらの問題は構造として扱われません。

結果として、

職場問題が疾病問題へと翻訳される

という構造が生まれます。

なぜ企業は疾病モデルを使い続けるのか

それには、いくつかの構造的な理由があります。

疾病モデルは、

• 判断基準が明確である

• 医療という既存の専門領域に委ねることができる

• 制度として設計しやすい

という特徴を持っています。

つまり企業にとって、

不確実な「労働リスクの判断」を直接扱うよりも、

「医療的な回復」という基準に基づいて復職を判断する方が、

運用しやすく、説明可能性も高い

のです。

さらにこの構造では、

「主治医が許可した」

という形式を取ることで、

本来は組織が負うべき

労働リスクの判断責任が、

結果として医療側に委ねられる形になります。

このように疾病モデルは、

企業にとって一定の合理性を持つ構造なのです。

しかしこの構造には限界がある

疾病モデルの問題は、

働くことのリスクが見えなくなる

ことです。

復職とは、

単に病気が治ったかどうかではなく、

その働き方が安全か

という問題でもあります。

しかし疾病モデルでは、

• 業務負荷

• 労働時間

• 職場配置

といった

労働リスク

が制度の中心に入りません。

SATの視点

私はこの問題を、

Structural Accountability Theory(SAT)

(構造責任理論)

の視点から整理しています。

SATでは、

健康問題を個人の問題として閉じるのではなく、

職場における労働リスクとして捉えます。

つまり復職とは、

• 病気が治ったか

ではなく

• その働き方は安全か

という、

労働リスクの判断

なのです。

復職制度は再設計が必要

復職制度は、

疾病モデルから

労働リスクモデルへ

移行する必要があります。

それは、

• 医療判断

だけではなく

• 労働環境

• 業務設計

• 組織責任

を含めた、

構造としての復職

です。

復職とは、

「治ったかどうか」

ではありません。

その働き方が安全に成立するか

という、

組織が負うべき責任を伴う意思決定

なのです。

Keywords

Return to Work

Occupational Health

Disease Model

Work Risk

Structural Accountability Theory

SAT


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